時間:2024年1月10日
オメガ時計「シーマスター アクアテラ シェード 38mm」を着用レビュー
多彩な文字盤バリエーションを展開するオメガ「シーマスター アクアテラ シェード 38mm」の、サフランカラーのモデルを着用レビューする。本作は、“良い腕時計”を所有する楽しみを味わえる1本だ。
「シーマスター アクアテラ シェード」は、2022年にオメガが発表したコレクションである。ケース直径38mmおよび34mmサイズがラインナップされ、それぞれで多彩なカラーの文字盤が用意されていることが特徴だ。このカラーは海から大地まで、“自然の色”が表現されている。今回着用レビューするのは、サフランカラーの文字盤を有したモデルである。
従来からある「シーマスター アクアテラ」のメンズモデルとスタイルは大きく変わらない。「シーマスター」コレクションの中ではアウターベゼルを持たず、また、ポリッシュ仕上げを多用したケースとブレスレットによって、スポーツウォッチでありながらドレッシーな印象を備えている。搭載する自動巻きムーブメントはやはり既存のシーマスター アクアテラ 38mm径モデルと同じく、マスタークロノメーター認定のCal.8800だ。一方で文字盤はチークコンセプトを持たない。また、ブレスレットも長方形のコマではなく、より細かで丸みを帯びた形状となっている。
“良い腕時計”の要素はさまざまだろう。webChronosでも、これまで「良質な時計の選び方」を取り上げてきたし、人によってもその基準は異なる。とはいえ、今回レビューしたモデルは定価100万円超えの、高級腕時計だ。この価格帯になると、ケースやブレスレットのエッジが立ちすぎていないとか、リュウズを引き出した時にガタつかないとか、パーツ同士のクリアランスが空きすぎていないとか、そういった“良い腕時計”としての基本的な要素を詰めていることがほとんどだ。そんな中で、見ていると心が躍るような、着用中に何度もつい目をやってしまうような意匠を備えたモデルというのは、ユーザーにとって“良い腕時計”として大切な要素のように思う。そして本作は、自分にとって、まさに見た目から得られる満足感がとても高い1本であった。
何と言っても、サフランカラー文字盤の存在感が際立っている。近年、技術進化によって、“カラフル”と“安定して鮮やかな発色”を両立した文字盤の腕時計が、各社で製造されている。シーマスター アクアテラ シェードもそんなカラフルな文字盤を楽しめるコレクションだ。とりわけ本作の、ラッカー仕上げによって実現しているサフランのくすんだオレンジは、あまり他社製品には見られず、派手さや奇抜さのない意匠なのに、独創性を感じられる。
さらに、サンブラッシュ仕上げが良い仕事をしている。さまざまな光源下で文字盤を眺めたが、光沢が強く、その光沢も見る角度によって位置や幅を変えるため、飽きがこない。弱い光源下でサフランが、暗く渋みを増すのもまた楽しい変化だ。なお、アロー針や楔型のインデックスは力強いため、光源によって視認性が損なわれることはなかった。秒針は文字盤外周のミニッツサークルまで行き届いており、本作がただ意匠に優れているのみならず、純然たる実用時計であることを教えてくれるディテールだ。蓄光塗料が施されているので、暗所での視認性も確保されている。
さらに、ポリッシュに仕上げられたケースやブレスレットのセンターリンクがセーターやカーディガンの袖口からも存在感を放っており、「高級腕時計を身に着けている」という実感を高めてくれた。
本作のケース直径は38mm、厚さは12.3mm、重量132g(8コマ詰めした状態だと116g)。決して小ぶりなサイズではなく、手首回り14.7cmの自分にとって、レビュー前は着用してて疲れるのではといった懸念があった。しかし、10日間の着用期間で、その懸念は忘れ去られた。
ケース直径は38mmだが、全長は44.9mmに抑えられているため、若干手首から浮いてはいるものの、手の甲側から見た時にケースが手首上に収まっておりカーディガンの袖口から隠れる。また、手首にフィットさせられるようブレスレットサイズをキツくしたのだが、コマが小さく遊びが適切であったため、よく手首になじんだ。肌が当たるコマ裏はサテン仕上げによってサラサラとしており、長時間の着用でも痛みは感じない。
コマが小さく、かつ外せる部分も多いため、さまざまな手首サイズに合わせられるのも大きな利点であろう。もちろん、男女問わず、だ。レディースウォッチも最近は大きいケースのモデルが増えているが、中には手首からはみ出してしまったり、着用時に異物感を覚えてしまったりするモデルもある。装着感でちゅうちょしているなら、ぜひこのシーマスターを試してみてほしい。ちなみに高級スポーツウォッチらしく、コマ連結はネジ式。ブレスレット調整はユーザー自身で行うのではなく、購入店にお任せしよう。
携帯精度を測ったところ、良好であったことも記したい。1日につき13〜14時間ほど着用して、最初の着用時、フルに主ゼンマイを巻いてから24時間経過した時点で+1秒、48時間経過した時点で+2秒の進みだった。
リュウズを使って時刻合わせも行った。ねじ込み式リュウズは小さく、また溝が刻まれている。針合わせの重厚感も相まって、少し操作はしづらい。しかし、このリュウズの意匠も本作をドレッシーに仕立てるのに一役買っている。また、パワーリザーブは約55時間あり、かつ、着用中に主ゼンマイがよく巻き上がっていたことから、毎日一定時間着用しているのであれば、頻繁なリュウズ操作は必要ないだろう。
10日間の着用期間中、優れた実用性を楽しみ、改めて毎日使うのであれば性能は“良い腕時計”の要素として大切だと感じた。
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